仕事の評価のギャップ「評価者・従業員双方の目線」

360度評価とは

世間的には年功序列の廃止が進み、多くの企業は成果主義に移行しつつあります。しかし、従来の評価制度では、従業員一人ひとりの成果を正当に評価するのは難しい状況です。また、煩雑な人事評価を一人でこなすことが、上司の大きな負担にもなっています。こうした問題を解決するべく近年注目されているのが、上司と部下が双方向で評価しあう「360度評価」です。360度評価とは、上司だけでなく、同僚や部下といった多数の視点を取り入れた人事評価の方法です。従来の評価制度にはない、部下が上司を評価する視点を取り入れることで、より客観的かつ公正な評価が可能になるといわれています。

360度評価のメリット

360度評価による従業員のメリットは、公平な評価につながりやすい点です。上司からの一方向評価では不公平になる可能性がありますが、部下も上司を双方向で評価すれば、評価の客観性が保てます。一方的で理不尽な評価になりにくく、自身の言い分も主張できるため、ストレスを抱え込みにくくなるでしょう。また、上司以外の第三者の目線が入ることで、評価の精度がより高まる点もメリットです。多面的な評価には説得力があるため、従業員は自身の改善点を受け入れやすくなるでしょう。
上司にとっても、360度評価は、自身で気づかなかった特性や長所、短所などを知るいい機会になります。また、部下から評価されるという意識を持つことが、日頃の考え方や行動を見直すきっかけにもなるでしょう。正当な評価が実施されれば、従業員のモチベーションアップ、ひいては定着率の向上にもつながるため、企業にとっても大きなメリットがあります。

上司を評価する際の注意点

メリットが多い360度評価にも、いくつかの注意点があります。まずは、部下に評価されるという状況により、かえって上司と部下の関係性がぎくしゃくしてしまう可能性があることです。部下に気を遣いすぎて適切な指導が行えなくなったり、上司が多大なストレスを抱えてしまったりする恐れがあるため、注意が必要です。また、評価基準が明確でなかったり、評価者が制度をよく理解していなかったりした場合、結局評価が主観的になってしまう可能性もあります。それを防ぐため、事前に評価者研修を実施している企業も増えています。

自身も評価に携わることで、他者を正当に評価するのがいかに難しいかを実感できます。もちろん理不尽な評価には立ち向かうべきですが、評価してもらえないとただ不満を漏らすだけでなく、正しい評価につながるよう協力する姿勢が大事です。